玄人好みのオルタナティブサウンドにヌンチャクでのパフォーマンス、2000年前後にその名を轟かせ、現在は元気に活動休止中。コロバ・ミルク・バーがインディーズ時代の旧譜を中心にサブスクリプションでの音楽配信を開始した。何故今のタイミングでのサブスク解禁となったのか、今後バンドはどうなるのか。当時のエピソードを交えながらの貴重なインタビューです!
interview by 齋藤泰人(Hooky Records)
2024.07.31
ー 自己紹介からお願いします。
AKINO LEE ヴォーカル&ヌンチャク担当AKINO LEEです。現在はアーティスト活動はほとんどしておらず、本業はアイドルの先生。副業でカレーおじさん\(^o^)/をしています。
ugazin ギターのugazinです。コロバには2011年に加入しました。現在はugazin名義でいろんなボーカリストさんをフューチャリングするかたちで活動をしています。今回の2024年度版「2Decades 2days 」ではMIXとマスタリングも担当してます。
スパンキー細谷 ベースのスパンキー細谷です。現在参加してるバンドはCWC.(シーダブシー)、SoL(Spirit of Lies)です。その他ライブやレコーディングのサポートで携わってるアーティストはCartilage、今井優さん、ばんゆうきさん、海象ジロウさん、DIXIESです。愛機はアトリエZのM265で東京生まれ東京育ちですが生粋の阪神タイガースファンです。
ー インディーズ時代の未配信やリマスターの作品が一気にサブスク解禁となりましたね。
スパンキー細谷 率直な感想は嬉しいです。CDプレイヤーを持たずサブスクリプションで音源を聴く時代にコロバの楽曲を聴いて貰える機会を貰えました。ライブ活動はしなくなりましたが、昔からのファンにも当時を懐かしく思い出して欲しいし、コロバを知らない世代の人達にも聴いて欲しいです。
AKINO LEE 僕自身は携帯やPCで音楽を聴かない古い人間なので、サブスクに関してもよく分かっていないくらいの状態なのですが、僕の教え子から「先生のバンドの曲ってサブスクに無いんですか?」と聞かれる事も少なからずありまして、これを機に「あるよ」と言えるようになったのは有難いことだと感じています。
ugazin 僕は今はコロバのメンバーなんですけど、それ以前は親友であり1ファンでもあったわけです。やっぱたまに聴きたくなるんですよ。コロバを。でも僕はかなり早い段階で音楽をCDで聴かなくなった方なので、この10年ぐらいコロバの作品をほとんど聴けてないんですよね。ライブの時も「久しぶりにあの曲やろうぜ」って言われると結構めんどくさかったりしました(笑)。なので、旧譜が配信されるのは単純にファンとして嬉しいです。
ー バンドとしては「元気に活動休止中」です。何故このタイミングでサブスクを?
ugazin まあ元々僕はコロバのみならず、2000年代に切磋琢磨してきた友達バンドのほとんどの音源がサブスクにあがってないことに軽くストレスを感じてたんですよ。なので、Hooky Recordsがここ数年やってきた再発活動にすごく賛同してました。「コロバもいつか出せたらなー」ってのはずっとうっすら思ってた。ただ、コロバの場合は原盤権がバンドにない作品が多いのでちょっとめんどかったんです。
ー 確かにそうですね。
ugazin で、今回話が動き出したのは、どっちかというと「2decades 2days」の再構築作業を始めた事でした。「リミックス」というと違う意味になってしまうので「リマスター」と言ってますが、実際には1からMIXしなおしてます。去年の夏に、コロバの録音やMIXをやってくれてた野口(PRINCE ALBERT)が、ラジオ高崎の番組に僕を呼んでくれたんですよ。その前後で野口と久々に再会できて酒を交わす中で「コロバのアルバムのバラトラックが残ってたら、MIXしてみたい!」って言ってみたら本当にデータ残っててすんなり話進んで。で、MIXやってみたらかなり手応えがあって、これは皆さんに聴いてもらわなきゃダメだと思ったんです。
ー データ残ってて良かったですね!
ugazin 8年も経ってるのに保存してくれてるとは、、あんまり期待してなかったんですけど、嬉しかったですね。
AKINO LEE 野口は義理堅いし真面目だから。
ugazin でもまあ8年前の作品をMIXし直しましたってだけだと誰も聴かないだろうなーと。じゃあここで重い腰上げて原盤権の調整してコロバ全作品カタログを公開したら、企画としても成立するし、ファンも嬉しいよねと。そこからそういう大人の調整に時間がかかって今に至るって感じですね。
AKINO LEE ugazinが提案してくれて、当時のマネージャーに連絡つなぎ、あとは完全に任せた形になります。ugazinさまさまです(笑)。
スパンキー細谷 ugazinから話が無ければ今も配信するに至ってなかったと思います。話をくれたHooky Recordsとugazinに感謝です。
ー 「2decades 2days」のリマスターを聴いた感想はどうでしたか?
AKINO LEE あれ?聴く機会あったっけ?
スパンキー細谷 一回メシ食ってたときに聴かせて貰ったっけ?ちゃんと聴いてない説(笑)。
ugazin CDは一応渡したけどみんな「配信されたら聴くからいいよ」って感じだったよ(笑)。
スパンキー細谷 あ、ゴメン、そうだった!
ugazin 信頼の成せる業ということで(笑)。
ー サブスク解禁ではじめてコロバ・ミルク・バーを聴く人も居ると思います。コロバ・ミルク・バーってどんなバンドですか?
AKINO LEE 昔、インタビューなどで「ジャンルは?」と聞かれたら「J-POP」って答えてました。
スパンキー細谷 今思うと結成当時から大人びたことをやってたように感じるので、当時から古く感じる人も居ましたが、それに反して新しく感じてくれた人も居たと思います。なので今聴いても新しく感じるかもしれないし、古いと感じるかもしれませんが、感じ方は人それぞれ。「コロバ・ミルク・バー」というジャンルだと思って聴いてください。平たく言えばリーくんのいうように「J-POP」で大丈夫です(笑)。
ugazin よく和製レッチリみたいな言われ方してたんですけど、客観的に雑に丸めて言うとその通りなんだろうと思います。多分コロバファンを100人集めて「他に好きなバンドは?」って聴いたら多分レッチリが1位だと思うので、はじめての人が先入観持つならそれでいいかな。久しぶりに「1980s in 21C.」を聴き直して思ったんだけど、多分プロデュースされた高橋竜さんも中期レッチリ特有のソリッドな音像をかなり意識してたんじゃないかなと思います。AKINO LEEは全然レッチリの影響受けてない人なのでこう言うと文句言われるかもしれないけど(笑)。
AKINO LEE そうですね。僕が影響受けたのは細川たかし大先生ですからね。本気で。そして男闘呼組みたいになりたいと思ってバンドはじめたようなもんですし。これも冗談抜きの本気で。
ugazin オケが完全にロックなのに、AKINO LEEが細川たかしさんから影響受けてるのもはっきり出てる曲調が中期に確立されたと思うんだけど、あれはちょっとした発明だと思いますね。「愛拳傳」とか「炎歌」とか「無有」とか。
AKINO LEE 僕は仕事にするくらいアイドルが大好きなんですが、アイドルの曲って様々なジャンルの曲の要素が沢山入っていて深いんですよ。それを紐解いていった結果、ジャンル問わず様々な音楽を聴くようになりました。曲作りしていても、僕以外のメンバーがレッチリ好きだからほっとくと完全にレッチリになっちゃうのを僕が何とか違うものにしたつもりなんですが、だから売れなかったのかもしれません(笑)。
ー いやいや。オリジナリティーがあるし実績も素晴らしいと思いますよ。
AKINO LEE あとはバンド名もそうなんですが、メンバー皆映画が好きなんです。特にカンフー映画が大好きで。そのように音楽だけじゃなくて色々な要素を入れた結果がコロバの音楽でありパフォーマンスになっていると思います。歌詞も映画や文学を好きな方ならニヤリとしてくれるんじゃないかと思う部分が多いので、そのあたりも感じていただけると嬉しいです。
ugazin もう結成当初からAKINO LEEの作詞は多方面から称賛されていて、僕は「ニクい」「イキな」作詞をする人だと思うんだけど、これはコロバをコロバたらしめている最も重要なパーツですね。
AKINO LEE これ僕らのことよく知らない方が読んだらメンバーで褒め合ってる気持ち悪いバンドに見えるかもしれないので一応言っておくと、ugazinが加入してから作った作品は「2decades 2days」だけで、他は前のギタリストなんです。つまりugazinは外からコロバを見て思ってたことを言ってくれてるんだってことは補足させてください。
ー 配信される楽曲の中でオススメの一曲を教えて下さい。
ugazin まあ僕は「人生を最高に旅せよ」かなー。僕加入後の作品って、コロバファンにもそんなにアピールする機会がなくて馴染みが薄いと思うし、リマスターって言われるとどうせそんなに変わらないだろうと思われるだろうけど、当時なかった技術を使って編集しなおしてるので全っ然音像違うので。コロバのラストシングルになる可能性が大なので(笑)、そう思って聴くとちょっと泣けるんじゃないかと思います。
AKINO LEE 個人的おすすめは、大好きなカレーのことを歌った「雅螺夢魔沙羅」、大好きなカンフー映画の世界観の「愛拳傳」、サビのコード進行が色々なJ-POPで使われている王道進行な「J-POP」、哲学について歌った「アウフヘーベン」ですかね。
ugazin 「アウフヘーベン」は、リリースされた時何事かと思ったの覚えてますね。歌詞とボーカルテンションとリフのバランスが何かおかしいんだけど、不思議な勢いを産んでて、「あーコロバ本当に調子良さそうだなー」と当時思ってました。
AKINO LEE 休止してた頃に個人的にSYSTEM OF A DOWNにハマってね、サージの歌唱法を取り入れてみたらああなったのよ。
ugazin 「愛拳傳」は確か活動休止直前にできてたよね?何で休止するバンドが新境地切り開いてんだとビックリしたの覚えてるなー。これも代表曲だよね。物販で「あの曲入ってるアルバムどれですか?」とか聞きにくる人がちょいちょいいて。
AKINO LEE そう。メジャーデビューして2年契約の1年したくらいにできて、これで攻めようと思ってたら休止せざるを得なくなって。当時は続ける気だったのが僕だけでしたね。
スパンキー細谷 アンサンブル的に面白いな…と思ってるのは「人間万事ヰタ・セクスアリス」と「禅Mondo」。「人間万事ヰタ・セクスアリス」はギターのリフが4拍フレーズに対してベースのリフは3拍フレーズ、ドラムは2拍フレーズです。これらの絡みを楽しんでください。「禅Mondo」はギターとベースが交互にフレーズを弾き合い最終的に重なります。その間、ボーカルはストーリーテナーのように物語を語ってるのが面白いと思います。あと「プシュケー」は確か、レコーディング中にその場で作った曲じゃなかった?スタジオブースに行かないでオペーションルームでベース繋げて録った記憶だけど。その場ですぐ採用したのがアーティストっぽいなって思った記憶(笑)。
ugazin そうそう。「プシュケー」は時間余ったからもう一曲ぐらい入れらんねーかなつって、俺がギターフレーズだけ作ってそこからセッションでしたね。AKINO LEEがその場でメロと歌詞作って。多分スパンキーの記憶合ってると思う。2日目はベースとドラム片付けちゃってたはずだから。
AKINO LEE バンドの代表曲はおそらく「一撃必殺!!」だと思います。昔ワンマンライブの企画で全曲人気投票したら、これが圧倒的1位でしたから。
ー サブスク解禁したらライブしたくなりませんか?
AKINO LEE なりません(即答)
ugazin ライブ、しません!
スパンキー細谷 ugazinからサブスクの話があった日に、僕以外の3人は「ライブやらなくていいかな…」との意見だったので悲しくなりました。いやー、びっくりしましたよ(笑)。
AKINO LEE 無期限に活動休止中ではありますが、永遠にやらないと決めたわけでもないので突然やるかもしれません。ただ、この場にもいないんですがドラムのMAAが人と会いたくないモードに入っているようで、飲もうと誘ってもなかなか来ないんです。我々3人はなんだかんだ定期的に会ってるんですけどね。4人の気持ちがライブやりたいなとなったら、その時はどこかでライブすると思います。
ugazin 僕がこの企画の話をするためにメンバーに声かけて集まった時、MAAちゃんは「ugazinがやる気出してガンガン活動しようって言い出すんじゃないか」と思ったらしく、前の晩寝れなかったそうです(笑)。こん時(https://x.com/ugazin/status/1690365771283869696)ですね。
AKINO LEE その時MAAは「バンド動くのは止めたくないけど自分はやりたくないから直接バンドやめるって伝えないと!」と思って意を決して来たようですが、やる気満々なのはスパンキーしかいなかったので安心し、それならやめなくても良いかと思って今に至ります(笑)。
ー 各々の今後の予定を教えて下さい。
ugazin 今年Good Boy Jabが3rdアルバム出したんですけど、来月あたりにそれのリミックス盤が出ます。あと、ソロ名義ugazinとして年内にシングルが2本と、インストのアルバムも出せるかなー。
スパンキー細谷 CWC.で7月から5ヶ月連続でシングル音源を配信中です。現在レコーディングと平行してMIXとマスタリングを行ってるところです。それに伴いライブも毎月入ってますね。詳細はまだですが海象ジロウさんのサポートが10/5(土)に決まってます。あとこちらも詳細はまだですがCartilageさんのサポートが11/23(土)に決まってます。
AKINO LEE 自分の音楽活動としてはSOPHIAのジルさんと作曲家の黒崎ジョンさんが主宰する「東京咖喱喰部」というミュージシャンのカレーサークルのイベントが11/10(日)にありまして、BOØWYのドラムの高橋まことさんと一緒にBOØWYの曲をやります。他はカレーおじさん\(^o^)/としてDragon Ashのサクちゃんや元BiSH、現CENTのチッチと一緒にCSフジの「スパイストラベラー」という番組をもう5年程やってまして、レギュラー出演しています。純粋に音楽活動というよりはカレー活動の中で自然と音楽も関わっているという状況です。メインの活動はアイドルの指導者であり、教え子の曲も沢山聴いて欲しいです。8/12月に幕張メッセでワンマンライブを控えているiLiFE!をはじめ、ヒロインズに所属するアイドルは全員僕の教え子であり、他の事務所のアイドルも多数指導しています。詳しくは僕のSNSを見てもらえれば。と言ってもカレーの投稿がほとんどなんですけども。
ー 最後にコロバ・ミルク・バーのファンへメッセージをお願いします。
ugazin 今回配信される作品で最も古いのが2003年リリースの「CoLoBa MILK BAR」で、一番新しいのが2016年リリースの「2decades 2days 」。さらにこれは最終的な仕上げがされたのは今年ということで、20年前後のギャップがあるんですよね。その間に変化した歌詞だったりメンバーそれぞれのプレイだったり、yasushiと僕のギター、高橋竜さんと僕のプロデュースワークと、時代をまたいだ比較を楽しんでもらえると嬉しいかなと思います。
スパンキー細谷 CD無くしちゃった人も居ると思うのでこれを機にサブスクで聴き返してください。懐かしの曲を聴き返すと当時の記憶が戻ることがあるじゃないですか?当時好きだった人のこととか?コロバの音源を聴いたことで昔の記憶とか思い出して当時の思い出に浸ってくれたら嬉しいですね。
ugazin これでコロバ・ミルク・バーの作品が数百万再生されたりしたら、「そこまで皆さんが求めてくださるなら」という動機が生まれるんですよね。例えばMAAちゃんがやる気だしてくれてライブができたりとか、例えばメジャー時代の原盤権持ってる会社さんが動く理由にもなるし、例えばもっと掘り出し物の音源を僕らが発掘したり再録するとか。結局、成果が全てを癒すというところあるので、たくさん聴いてください!
AKINO LEE とりあえずメンバーみんな生きてます。MAA以外はSNSもやってますのでフォローしてくれば最近の動向も見えてくると思います。音源聴いた感想など、SNS経由で伝えてくれたら嬉しいです。お互い長生きしましょう!
コロバ・ミルク・バー
1996年結成。AXIAアーティストオーディショングランプリ、NHKニューBSヤングバトル審査員特別賞など様々なオーディションで受賞後、2000年メジャーデビュー。現在は元気に活動休止中。メンバー全員武田鉄矢さんのファンです。
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