音楽が好きな人なら一度は感じたことがあるかもしれないミューズ(芸術の神様)。今回は音楽に深くのめり込んできたであろうアーティスト達に「ミューズが降りてきた瞬間」をテーマに寄稿してもらいました。好きな音楽を聴きながら読んでみて下さい。
text by 齋藤泰人(Hooky Records)
2020.12.28
たかし(allizdog)
ふむふむ、ではあなたは音楽の神様はいるとおっしゃるわけですね。あ、これは否定してるわけではなくて、非常に興味深いなと。日本には古来より八百万の神様がいて、米の一粒一粒にも神様がいますし、トイレの神様だっていますからね。さらにはもののけ、あやかし、妖怪、怪獣だって神様みたいなもんですから。音楽の神様がいてもおかしくはないでしょう。そーすると音楽の神様ってなんでしょうね?私はね、古今東西の神様は信仰によって作られてると思うんですよ。なので、音楽の、特にロックの神様も信仰によって作られているんじゃないかと。「あんなもんはロックじゃねー!」とかね、自分の信じるロックがあるからつい口にしちゃいますよね。なんてね、こんな偉そうなこと言って申し訳ないですね。なんだかんだ言ってもね、自分も20代の頃は自分の信じるロックを信仰してたんですよ。薬やタバコやお酒なんかもやらないで、どれだけ純粋にロックと向き合えるかってね。えっ、今ですか?今は自分の中のロックの定義が変わりましてね、色々なロックがあるなと。あ、すみません、店員さん、ホッピーのなか、下さい。あ、いやいや、すみませんね。それでなんでしたっけ?あ、そうそう、音楽の神様ですよね。例えば日本に限らず、世界中で神がかった儀式を行う時って必ず音楽があるじゃないですか。太鼓だったり歌やお経だったり。そーいうのも、もしかしたら音楽の神様の力を借りてるのかもしれませんね。日本の著名なオカルト研究家が行った実験によると、和田アキ子氏の「あの鐘を鳴らすのはあなた」を聴いた3人が同じ絵を描いたって結果があるそうですよ。少し話が飛躍しましたかね?すみませんね、どーも。あ、店員さん、カニクリームコロッケってあります?ない?あー、じゃあ、メンチカツは?ある?じゃあ、メンチカツ、1つお願いします。どもども、すみませんね、なんかこの話してると無性に食べたくなってね。何か妖怪や精霊や怪獣が近くにいるんですかね。そうそう、怪獣と言えば、佐野史郎さんとみうらじゅんさんがゴジラ対談した時に、冒頭でいきなり佐野史郎さんが「ゴジラとロックって同じですよね?」って切り出して、みうらじゅんさんが「当然ですよ、ロックとゴジラはイコールです」と。そして、みうらじゅんさんが「ゴジラって英語だとGODZILLAって書くでしょ。GOD、つまり神なんですよ」って言ってましたね。となると、ロック=ゴジラ=神で、ロックはやっぱり神様なんですよ。なんでも、巷にはGODZILLAを逆読みにした名前のバンドもいるみたいですけど、もしかしたらロックの神様にあやかりたかったのかもしれませんね。あ、いやいや、すみません、つい長話を。今日はもうお帰りですか?これからライブ?前打ち上げ?あ、観に行くんじゃなくて、ライブする側?ロックだなー。
noribooooone a.k.a PG(TAPE ME WONDER , pygmy with bitter ends , Mellow Monk Connection)
「ミューズが降りてきた」「曲が降ってきた」というような表現が適切かどうかは別として、思い付いてから完成するまでが、とても短い曲は確かにあります。
一般的に、そういった類いの曲はキャッチーな人気曲になる傾向にあり、作り手のエピソードトークとしても王道の一つになっていますが、作り手目線でいうと、難産曲は苦労しただけの思い入れもあるし、そもそも作った曲の優劣を比べることは無いということは、最初に申し上げておきたいと思います。
主体がバンドである以上、曲についてはアレンジ含めメンバーとの共同作業の部分が大きいですが、作詞については、ある種の勢いにのって一気に書き上げることが多いですね、僕の場合。
色んな意味で文章や詩というのは、ある程度一気に書き上げないとかえって難しくなるような気がしています(まさにこの文章のように)。
言葉というものは、有象無象の星屑や、海に無数に存在するプランクトンみたいなもので、ある種のトリガーにより、突然、生命体のように鮮やかに形を作ったり、連動し躍動することがあります。
だから僕にとっては、曲が降ってくるというより、言葉が降ってくるといった方がしっくりくるし、もっと正確に言うと「形をともなった言葉達が泳いでくる」という表現になるかも知れません。
問題はそのトリガーが何なのかということで、一概にコレということは言えないのですが、旅や生活を通した出会いというものが僕に与えてくれたものは、決して小さくないと思っています。
TAPE ME WONDERでも、(大作を作った後などは)なかなか曲作りが上手くいかない時期もありましたが、最終的には、曲そのものではなく、このことを歌いたい(歌うべき)という強い気持ちが、再び曲作りに取り組む上での原動力になったかと思います。
結局、創作はパッションと集中力ですよね、ネットを中心に多岐に渡る娯楽が増え過ぎた現在、自分に向き合う時間をどれだけ確保出来るかが、重要な気がしています。
ちなみに、TAPE ME WONDERの最近の新曲「ムーンライダー」は、詩を含めて、完成までかなり早かったように思いますので、是非ともチェックしてみて下さい。
東 康明(Zangief Zangief)
ドラム東が選ぶ、【ザンギエフにミューズが降りてきた瞬間】ベスト3
③『Percy』終盤のドラム
私たちは基本的にスタジオでジャムりながら曲を作るのですが、この曲は土屋君(以下、つっちー)がPCで原案を作ってきてくれました。当初打ち込まれていたドラムは手5本くらいないと叩けない神テクで、つっちーのドSっぷりを改めて思い知らされたものでした。ああでもない、こうでもない、としばらくフレーズが決まらなかったのですが、ある日のスタジオで、突然にバッチリとハマるフレーズが降りて来て、メンバーもこれだ!と納得してくれました。あの時こそミューズが降りてきた瞬間だと思っています。直前にYouTubeで見た川口千里ちゃんの動画へのオマージュ(パクった)ということは内緒にしています。
②『Akebono』の堀田君ベースソロ
それまでほとんどの曲がカッチリとフレーズが決まっておらず、よく言えばJAZZYに、悪く言えばその場の勢いで演奏するスタイルでした。
そんな僕らもCD(E.P)を作るとこになったのですが、レコーディングが始まったタイミングで「あれ?そういうば、このベースソロのフレーズ決まってなくね?」ということに気づきました。正直どうなることかと思ったのですが、堀田君はJAZZYさも残しつつ、『堀田節』とも言える独特なソロをその場で弾き上げ、今ではそのフレーズが定着しています。
佐賀県民の懐の広さを感じた瞬間でした。
①『新曲』つっちーのベース&キーボード同時弾き
この曲はカッコいいギターフレーズが最初に決まったので、ベースをつっちーが担当することになったのですが、3ピースだとちょっと音が薄いなということになり。半分冗談でつっちーに「ベースとキーボード同時に弾けない?」と、いつかの無茶振りの仕返しで言ってやったつもりでした。しかしこの男、数分じっと考えた後、同時弾きをサラッとこなし、あれよあれよと言う間に、その日のスタジオで曲がほぼ出来上がりました。
多分彼、ミューズなんだと思います。
タンクボール(キャラメルパンチ)
音楽の神様とかは考えたことないけど、キャラパンに関して言えば「絶対に晴れる」がそれに当たるのかなあ。
今までワンマン含めたら30回近く自分たちの主催イベントをやってきたけど、天気が悪かったのは本当に一回くらいだと思います。
屋外の撮影行っても晴れるし、ライブの日は大体晴れ。バンドで何かやるぞってときは確率で言ったら98%くらいの晴天率だと思います。
なので、そういう大事な日であっても、もう天気予報とかは見なくなりました(笑)。
個人的に占いとか迷信とかは全く信じないんですが、ことキャラパンの晴れのジンクスに関しては実体験から来てるので、なにかそういう目には見えないものがこのバンドにはあるのかなと思ったりもしています。
ライブが終わってライブハウスの階段を上って外に出た時の、パッと澄んだ空とスカッと晴れたあの独特な気持ちや空気感をまた必ずみんなと共有したいなあと思っています。
Eizi(Sheepshead)
僕はSheepsheadを組む前から曲を作っていて、曲を作り始めた当時の頃から変わってません。
いつだって僕にミューズが降りてくる瞬間は
「古典の授業中」
です。
ミューズは古典の授業が好きなのでしょうか?
たくさん僕に味方をしてくれます。
そして、なんとメロディーだけでなく歌詞も古典の授業中に浮かんできます。
なぜ家にいる暇な時に浮かんでこないで授業中に浮かんでくるのか?
それは家にいる時は何か他のことをしてしまってるからです。
家にいる時は基本的に暇です。暇ですがスマホいじったり、漫画読んだり、ご飯食べたり、シャワー浴びたり、何かしら必ずしてるんです。
それに比べ授業中は強制的にぼーっとできる時間が出来るので、頭に隙間ができてミューズが降りてくるんだと思います。
koudai(Sheepshead)
先日スタジオでMV撮影をしている時に幸せだと思える瞬間が訪れた。それと同時にミューズが降りてきた気がした。
それはスタジオの鏡越しで楽しそうに音を鳴らす自分達の姿だった。
その日はメンバーで音を鳴らすのが久しぶりだった。それもあってかその瞬間に僕は「自分の居場所はここなんだ。自分は今幸せだ」と強く思った。きっとこれはミューズが降りてきた瞬間なんだと思えた。